研究概要 |
本研究の主たる目的は,はすかい工具を用いて微細医用素子を成形する技術の確立である.平成12年度は適切な工具形状と切削条件の検討,さらに適切に選定した工具および条件下で微細形状を創成することにある.微細工具であるので折損を避けるべく切削抵抗を小さく,また,面粗さを小さく抑える必要がある. 1.切削抵抗から見た最適工具形状:この実験的検討は精度,再現性の観点からはすかい角15°〜60°,直径10mmのマクロはすかい工具を用いて行った.結果は,主分力,送り分力,背分力のいずれも,はすかい角30°で最小となった.これはねじれ角的効果と切屑の排除しやすさの相乗効果によると考えられる.また,慣用のエンドミル(直径10mm,2枚刃)に比べ,切削抵抗は相当大きくなった.バリも大きいが30°付近で概して小さくなり,最適な角度の存在が明らかとなった. 2.粗さ解析からみた工具及び加工条件:はすかい工具は底面に切れ刃を有しないことから粗さが大きくなるので定量的把握が必要である.ここでも上と同じ条件で,解析及び実験を行った.工具軌跡を追跡する方法で理論切削面粗さを求めた.はすかい角が小さい程,また送り速度の小さい程,理論粗さは小さくなる.実際の切削面との比較では,粗さの大き領域では差が大きくなるものの,概して良い一致を見た.この差は,理論通りの切削ではなく,塑性変形的挙動を伴う加工が行われ,面がつぶされた結果と考えられる. 3.微細工具による微細切削:上記の基礎的検討を踏まえ製作した直径15μm,はすかい角15°と30°工具を用いて切削実験を行った.形状は医用鉗子グリッパーである.工具の折損は生ぜず,概ね良好な結果が得られた.ばりの発生はダイアモンド砥粒を用いたラッピングで除去できた.以上,当初の予定をほぼ完了できた.
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