研究概要 |
内層と外層とが異なる材料から構成されるクラッド歯車を,冷間型鍛造法で成形するための実用化技術の確立を目的として,加工工程についてのシミュレーション実験を実施した.検討に際しては,実機生産で課題となる金型工具寿命をできるだけ長くする観点から,加工工程中の面圧レベルの低減を図るための加工条件の最適化を図った. 本研究室のこれまでの成果により,中間素材の中心軸に逃がし穴を設ける単純なタイプの捨て軸方式冷間型鍛造では,充分な面圧レベルの低減効果を得られないことを把握している.今年度は,面圧レベル低減を図る方法として,1)捨て軸方式冷間型鍛造工程を2回に分割する方法,および2)中心軸にマンドレルを用いて加工工程中の逃がし穴を維持する方法の2つの方法を新たに採用した.これらの加工工程について,逃がし穴直径,各加工ステップの面圧レベルの配分,およびマンドレル形状の加工条件が,面圧レベルと材料の型孔内充填に及ぼす影響を定量的に評価した.その結果,以下のことが明らかになった. (1)1段方式と2段方式を充填率と面圧の関係により比較すると,同一の面圧条件では2段方式の方が20〜30%高い充填率が得られる.また,2段方式では1段方式では達成できなかった100%の充填率を比較的低い面圧で達成できる. (2)2段方式型鍛造工程で1回目圧縮時の面圧を3.0〜3.5,3.5〜4.0および4.0〜5.0の3条件とし,これが2回目圧縮後の充填率と面圧との関係に及ぼす影響を評価した.その結果,1回目圧縮時の面圧を4.3程度にすると1回目圧縮時の面圧と2回目圧縮時の面圧が同程度になり,かつ100%の充填率が得られる. (3)「マンドレルを用いた型鍛造工程」と「2段方式型鍛造工程」の2加工工程を充填率と面圧の関係について比較すると,「2段方式型鍛造工程」の方が小さい面圧レベルで材料の型孔内充填を実現できる.また,マンドレル高さが2mmの場合と4mmの場合を,充填率と面圧の関係について比較すると,2mmの場合は100%の充填率を達成できないが,4mmの場合は,面圧を大きくすれば100%の充填率を達成できる.
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