研究概要 |
チタン系セラミックスにバナジウムを添加した窒化チタンバナジウム(Ti,V)N被膜に着目し,この(Ti,V)N被膜においてTiとVの成分割合,すなわちTi/(Ti+V)におけるTiの割合を種々変化させた被膜を超硬合金の母材にPVDコーティングした工具を試作した.さらに,これらの試作工具で,各種焼結材料,ニッケルを多く含む合金鋼の被削材を高速度切削し,(Ti,V)N被膜におけるTiとVの成分割合が工具摩耗を及ぼす影響を調べた.さらに比較のために,TiCN,TiAlN被膜についても同様な実験を行い工具摩耗を調べた.平成12年度で得られた主な結果を次に示す. (1)超硬合金K10種を母材とし,TiN(=Ti100V0N)被膜,Ti75V25N被膜,Ti50V50N被膜をPVDコーティングしたコーテッド超硬合金を試作し,被膜の硬さならびにスクラッチ強度を調べた.その結果,Ti75V25N被膜のコーテッド超硬合金の被膜硬さならびにスクラッチ強度が最も優れていることがわかった. (2)上述の各種PVDコーテッド超硬合金工具で,焼結鍛造材および純鉄焼結材を旋削すると,Ti75V25N被膜のコテッド超硬合金工具の摩耗進行が最も遅くなった. (3)さらに,(Ti,V)N被膜の摩耗形態を明らかにするために,被膜摩耗面のSEM観察,およびEDX分析を行った.その結果,焼結鍛造材および純鉄焼結材の旋削では,いずれのPVDコーテッド超硬工具の主な摩耗形態は,アブレシブ摩耗であることを明らかにした.(4)ニッケルが多く含まれている鋼材としてSUS310を取りあげ,SUS310の旋削を行った.この結果,Ti50V50N被膜のコーテッド超硬合金工具の摩耗進行が最も遅くなった. (5)過共晶Al-Si合金の旋削では,いずれのPVDコーテッド超硬合金工具の摩耗進行に大差ないことがわかった.
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