研究概要 |
本研究では,チタン系セラミックスにバナジウムを添加した窒化チタンバナジウム(Ti,V)N膜に着目し,この(Ti,V)N膜においてTiとVの成分割合,すなわちTi/(Ti+V)におけるTiの割合を種々変化させた被膜を超硬合金の母材にPVDコーティングした工具を試作した.これらの試作工具で,各種焼結材料,ニッケルを多く含む合金鋼の被削材を高速度切削し,(Ti,V)N膜におけるTiとVの成分割合が工具摩耗を及ぼす影響を調べた.比較のために,従来から市販されているTiN膜のPVDコーテッド超硬合金工具(一部,CVDコーテッド超硬合金工具も含む)についても同様な切削実験を行い比較検討した.平成14年度で得られた主な結果を次に示す. (1)バイト以外の工具,すなわちドリルにも(Ti,V)N膜PVDコーティングを適用し,従来から使用されているTiN膜コーテッド工具との比較を行った.その結果,ドリル加工においても(Ti,V)N膜が優れた摩耗特性を示した. (2)(Ti,V)N膜を中間層とした多層PVDコーテッド超硬工具を試作した.すなわち,TiN-TiCN-(Ti,V)N-TiN,およびTiN-TiCN-(Ti,V)N-TiNの多層被膜を試作した結果,それぞれの単層被膜に比べ優れた摩耗特性を示した. (3)今までの研究成果の総括を行った結果,今後の新しい被膜として(Ti,B)N膜を考案した.この(Ti,B)N膜について調査・研究を行ったが,切削工具用被膜としては市販されていないばかりか,この被膜の耐摩耗性について明らかにされていないことがわかった.今後,(Ti,V)N膜よりも優れた被膜の開発に取り組んでいきたい.
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