研究概要 |
1.スチールコードの圧縮剛性 スチールコードは,それ自身が撚ったスチールファイバとゴムの複合材料になっている.このスチールコードの圧縮剛性をFEM解析によって計算した.その結果,圧縮剛性にはワイヤのみの剛性だけでなく,コード中心部に位置するゴムも大きく影響することがわかった.つぎに,このスチールコードの力学モデルについて検討した.そして,スチールコードの変形は以下の3条件を満たしながら生じるが分かった.(1)スチールワイヤ長さ,コード長さ,およびワイヤピッチ円円周長さの間に成立するピタゴラスの定理.(2)コード中心部ゴムの非圧縮性.(3)ワイヤの弾性変形.これらの条件を連立させて解くと,コード剛性が算出できる. 2.スチールコードとゴムの複合材料の圧縮疲労 タイヤにはこのスチールコードがゴム中に挿入されて複合材料板として使用されている.そこで,横浜ゴムにてその複合材料板の圧縮疲労試験を実施し,その破損試料を観察した.その結果,破損発生位置はスチールワイヤが座屈した領域であり,スチールワイヤはワイヤ軸に直角に疲労破壊していることが分かった. 3.スチールコードの屈曲疲労試験 東京製綱で作製したスチールコード1本をゴム中に挿入した試料の屈曲疲労試験を行った.その結果,その破損は2.の実験で生じた形態と類似のものであった. 以上の結果から,スチールコードとゴムからなる複合材料板の破損は座屈によって生じるが,直接の破壊機構は,屈曲疲労であることがわかった.今後は,スチールコードとゴムの複合材料板としての座屈強度がどのような幾何学因子の影響を受けているのかを力学的に解明することが重要となる.
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