研究概要 |
すべり送りねじはボールねじや静圧ねじと比べて,摩擦損失が大きいという欠点を持つが,剛性や振動減衰性の面では格段に優れている.そこですべり送りねじの高剛性・低振動性を生かしながら摩擦損失を低減する方法として,すべり面に接触面が分離しない程度の空気圧を供給し,振動減衰に有利な固体接触を保ちつつ,接触面間の負荷の一部を空気圧により支持する方法を提案する.本年度の研究では,昨年度の円筒モデルによる基礎実験で得られた知見をもとに,すべりねじに比較的単純な空気路を付与した"半浮上すべり送りねじ"の試作を行い,その性能を評価した. まず半浮上すべり送りねじを設計・製作した.基本ねじ山形は,ねじ軸外径30mm,リード8mmの30度台形ねじとし・めねじフランクには幅2.4mm,深さ0.6mmのリセス部を形成した.ナット外周にねじ溝と同リードの90°三角ねじ溝を設け,そこからリセス部中央に対して45°方向に直径1mmの空気路を設けた.ナット材質は青銅(BC6),ねじ軸材質はSCM415Hを浸炭焼き入れし,ねじ研削とラッピングにより仕上げた.またダブルナット間に複数個のコイルばねを挿入する予圧機構を製作した. 次に,試作した半浮上すべり送りねじについて,軸荷重F=300〜1500N,回転速度N=10〜200rpm,供給空気圧P=0〜0.3MPaとしたときの摩擦トルクを測定して見かけの摩擦係数を求めた.その結果,F=600N, P=0.3MPaの場合には,摩擦損失が空気圧0の場合に対して約40%低減することを確認し,本研究で提案する半浮上すべり送りねじの有効性を実証することができた.さらに,試作した半浮上すべり送りねじの位置決め性能を評価するための位置決め実験装置を構成した.今後,位置決め性能を実験的に評価し,実際の位置決め機構への応用を展開する.
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