研究概要 |
表面複合化の手段として,薄板振動体に直に粘弾性体を貼付するという簡易な方式による減衰能の向上を目指して,実験・理論の両面から検討を行った.なお,本年度はインパルス入力に対する応答から減衰特性を求めた. 振動体支持部に作用する摩擦力が減衰特性に及ぼす影響を避けるため,振動体を宙づり状態で加振実験を行うことが可能な装置を設計・製作した.この装置による薄板振動体の振動モードは,両端自由の境界条件を満たしたものになっていることを確かめ,予定通りの性能を有することを確認した上で基本的な実験データの収集に当たった.実験データの処理システムも市販のFFTアナライザーを利用して,作成した. 振動特性の異なる薄板振動系に特性の異なる数種類の市販粘弾性体(両面テープ)を貼付すると,最大で無貼付のときに比べて50倍ほどの減衰能向上を達成することができた.貼付した粘着テープのせん断特性をせん断変形試験から求めた.粘着テープ貼付面に作用するせん断応力とせん断ひずみ速度の比として定義したせん断ひずみ速度係数により,減衰能に関連した粘着テープの特性を評価しうることを明らかにした.せん断ひずみ速度係数が大きい粘着テープほど減衰能向上が著しい. 以上のような実験結果を説明し,振動系のパラメーターの効果を明らかにするために,粘着テープを貼付した薄板振動体の自由減衰振動を表す連立偏微分方程式を誘導した.この方程式を用いて,シミュレーションではなく,系の特性パラメーターから直接振動減衰能を見積もる方法を現在試行錯誤しながら検討中である.
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