本年度行った研究内容は以下の通りである。 (1)不均一凝縮核生成モデルの構築 大気中には微小な粒子、たとえば、すすやエアロゾルなどが存在するため、凝縮現象に影響を与える。本研究では、微小な粒子を核とした不均一核生成から生じる凝縮を伴った流れを計算する目的で、不均一凝縮核生成モデルの構築を行い既存の計算コードに組み込んだ。その結果、高湿度中を航行する二次元遷音速翼周りの流れにおいては、均一核生成(核なしの場合)と不均一核生成による凝縮の違いを捕獲することに成功し、特に実機スケールにおいては不均一核生成を考慮することにより凝縮現象は非平衡状態から平衡状態に近づき、遷音速航行による翼上面に発生する垂直衝撃波の位置が翼後縁側に移動することが数値的に示された。本研究の成果は2001年6月のAIAA CFD Conferenceにて報告する予定である。 (2)蒸気タービン最終段翼端静動翼列干渉流れの数値解析 凝縮が発生し翼性能に大きな影響を与えていることが指摘されている蒸気タービン最終段翼端における静動翼列干渉に伴う非定常流れを数値解析し、非定常性が凝縮に与える影響を明らかにした。その結果、前置静翼の無い翼列干渉を伴わない場合についてはほぼ定常的に凝縮が発生するのに対し、前置静翼からの後流との干渉により動翼流路内に発生する凝縮はその量が周期的に変化することが示された。これは、結果的に潜熱の放出量が周期的に変化することを意味し、翼に与える熱応力も変化していることを示唆している。
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