本年度行った研究内容は以下の通りである。 (1)大気環境中における遷音速翼周り流れの数値シミュレーション これまでに開発してきた、均一・不均一核生成を伴う非平衡凝縮流れ計算コードを用いて、大気環境中を航行する航空機翼周りで発生する凝縮が翼性能にどのような影響を与えているかを検証した。その結果、大気環境中では不均一核生成が支配的となるため、低い過冷却度において凝縮は発生し翼周りで生成された液滴が成長することが示された。本結果は、通常風洞内で行われている均一核生成が支配的な非平衡凝縮流れとは本質的に異なり、大気環境中における航空機翼性能を評価する上で、実際のフライトを想定した数値計算が極めて重要であるということを示唆している。本研究の成果は、日本機械学会論文集に掲載され、AIAA Journalに投稿中である。 (2)微小重力環境における凝縮を伴う熱対流の数値シミュレーション 前年度開発した前処理型流束分離スキームに基づく低マッハ数凝縮流れの計算コードを、微小重力環境における熱対流流れの計算コードに拡張した。これまでに広く用いられてきたBussinesq近似は用いない圧縮性流れの数値解法に基づく画期的な計算コードが開発され、重力環境から無重力環境までの様々な凝縮現象の数値計算に用いることができる。具体的には、加熱.もしくは冷却された物体周りに発生する自然対流問題を解き実験結果との比較から本計算コードの妥当性を検証し、さらに凝縮を伴う自然対流問題を数値計算した。本研究の成果は、日本機械学会論文集に掲載された。また、第4回日米流体工学会議に発表予定、ならびにInt.J.Heat and Mass Transferに投稿予定である。
|