感温液晶トレーサを用いた温度・速度3成分の同時計測法を完成させるためには、先に報告した温度計測法にステレオPIV法による速度3成分の計測法を新たに導入する必要がある。しかしながら、温度と速度の同時計測を高精度で行うには、速度測定、温度測定の両者の精度の最適化研究が必要である。予備的研究において、温度精度を良好に保つための感温液晶トレーサ粒子径と撮影するカメラの空間解像度の関係を考察し、温度計測に適する感温液晶トレーサ粒子単独では同時に高精度の速度測定には適さないことを示した。したがって、十分な温度精度を保ち、しかも速度も高精度で計測する方法として、新たに速度計測のためのトレーサ粒子の添加を検討した。これについては、二次元擬似カラー画像によるシミュレーションで対応した。計算結果によると、感温液晶単独の場合と比べ、数ピクセル程度のトレーサ粒子を加えることによって速度測定精度は格段に向上し、速度測定用の粒子添加は有効であることが判明した。一方、ステレオ撮影における2台のカメラのなす角度によって速度測定精度が変化する関係を粒子画像を移動させる実験によって明らかにした。また、温度精度に関しては、感温液晶の目視角度の影響について考察する必要があり、ここでは、回転テーブルを用いた実験装置で実験を行った。ライトシートの入射角度と同方向から可視化撮影を行うと、鮮やかな画像が得られ、HSIカラー空間におけるスプライン検定結果によると、良好な温度測定精度が得られ、温度計測カメラの角度を決定した。以上のシミュレーションならびに実験から温度・速度3成分同時計測の基本的特性が明らかになり、計測システムとして完成させた。また、その装置を乱流熱対流実験に適用し、その熱輸送現象の解明を現在進めている。
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