研究概要 |
交流電界下での液中粒子の凝集に及ぼす速度勾配の影響を調べるための実験装置を製作した.装置は,鋼製の内側円筒とアクリル製円管の内面に透明導電性フィルムを密着させた外側円筒からなる同心二重円筒構造であり,外側円筒の回転により円筒間にクエット流が形成される.本装置の円筒間に直径4μmのシリカ粒子を0.5g/lの濃度で混入した試料液(鉱物油,粘度5.7mPa・s)を入れ,種々の速度勾配(γ)で実験を行った.円筒間に印加する交流電界(60Hz)の強度(E)は1kV/mmと2kV/mmであり,粒子の帯電量の指標となるゼータ電位(ζ)の平均値が33mVと約280mVの試料液を2種類用いた.なお,製作した実験装置ではγが100s^<-1>以下での実験が可能であるが,約20s^<-1>以上となる回転速度では粒子が遠心力の作用により外側円筒内面に付着することが多く見られたので,実験は取り止めた.本年度得られた実験結果は以下のようである. 1.粒子の帯電量が大きい場合(ζ≒280mV)には,凝集の進行と速度勾配の関係は電界強度によりかなり異なるものとなった.E=1kV/mmではγ=4s^<-1>で顕著に凝集が進行し,それ以上の速度勾配では凝集の程度は徐々に低下した.一方,E=2kV/mmでは,γ=2s^<-1>で最も凝集が進行し,それ以上の速度勾配においてはE=1kV/mmのときよりも凝集の程度は著しく低下した. 2.ζ=33mVの場合には凝集はあまり促進されず,γ=2〜12s^<-1>の範囲で凝集状態がほぼ同程度となり,速度勾配に対する依存性はあまり認められなかった. 以上より,凝集に適した速度勾配の値が存在し,その値は粒子の帯電状態や電界強度などによって異なるが,大略10s^<-1>以下にあること,また,高電界は凝集促進に必ずしも有利ではないと帰結できるものと思われる.
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