研究概要 |
平成12年度に作製した同軸二重回転円筒型実験装置と,物性値(特に導電率)の異なる油5種類に直径4μmのシリカ粒子を0.5g/1の濃度で混入した試料油を用いて,粒子の凝集に及ぼす速度勾配の影響を調べた.また,粒子のゼータ電位を調節し,電界強度を種々変えて凝集実験を行い,粒子の振動振幅と凝集状況の関係を調べ,凝集の機構について検討した.本年度の研究により以下の結果が得られた. 1.凝集を促進させやすい速度勾配の大きさは油の種類,粒子の帯電状態および電界強度に依存するが,それらの条件によらず凝集が進みやすい速度勾配の値は数〜10s^<-1>である. 2.粒子の凝集には高電界の印加は必ずしも有利ではなく,多くの試料油において凝集を促進させやすい電界の値が存在した. 3.油の導電率が比較的低い場合に凝集は進行しやすく,導電率が高い油中では凝集は進みにくい. 4.粒子の凝集の程度は電界方向の粒子の振動の振幅に依存するが,振幅の大きさそのものが凝集現象を支配しているのではなく,振動の振幅と二重層厚さの比の値によって凝集現象が強く影響される. 5.以上の2〜4の結果より,凝集機構について次のことが推測される. (1)凝集は,粒子の電荷と二重層の電荷が二重層内で適度に分極する場合に進行しやすくなる.振動振幅が小さく分極が弱い場合,および,振動振幅が大き過ぎて二重層から粒子が飛び出す場合には粒子間に引力が十分に作用せず,凝集が進行しにくくなると思われる. (2)油の導電率が高い場合に凝集が進行しにくいのは,二重層の厚さ自体が薄くなることと二重層中の電荷が粒子の動きに追従しやすいことにより分極の度合いが小さく,粒子間に引力が作用しにくいためと思われる. 6.すべての結果を総合すると凝集促進のための力学的条件は,速度勾配が数〜10s^<-1>程度,交流電界強度は1〜2kV/mm,汚染物粒子の振動振幅が二重層厚さ程度となること,である.
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