本研究は流体機械内の3次元非定常流れ場を単眼画像計測する手法の開発を行い、実際の流れ場へ応用することによりその実用性を検討することを目的としている。 本年度は、昨年度構築した回転像静止法を実現する光学系と高速な非定常現象を捉えるための画像取得システムを用いて、インペラなど回転体に対する相対流れ場の非定常速度分布を計測し、その有用性を検討した。この計測ではdepth-from-defocusによるトレーサ粒子群空間分布検出法によりカメラ観測軸方向の粒子座標を検出しており、通常のステレオ法では観測不可能な環境で本計測法の特徴が発揮される。対象流れ場として、同軸対向する回転円板と静止円板間の流れを扱った。これは回転機械の回転体とケーシングとの隙間流れを模擬したもので、薄く強いせん断を生じる回転流れとなる。実験パラメータは、二円板間間隙3mm、回転円板直径50mm、回転数50rpm〜200rpmとして計測を実施した。本研究では上記の手法に加え、周方向速度分布が観測できるよう回転軸に平行に光切断した2次元画像計測と、3次元非圧縮性Navier-Stokes方程式を支配方程式とするMAC法による数値解析を行い、本手法による計測結果の信頼性を検討した。先ず、2次元計測と数値解析の結果から、無限に広い領域での回転流れの理論解析に示されている3次元的にねじれた速度分布が認められた。とりわけ周方向速度の回転軸方向分布には顕著な極大・極小値が現れ、回転数および半径方向座標の増大とともに顕著になることが示された。また、円板外縁部側壁近傍で回転軸に平行な強い下降流が確認された。さらに、回転軸方向からの単眼観測する本手法により、薄い層内の3次元速度分布が回転像静止法使用の有無に関わらず計測されており、上述の周方向速度分布に極小値が現れる結果も確認された。定量的な測定精度の評価を現在行っており、詳細な精度評価と最終的な報告書の作成を次年度に実施する。 なお、昨年度に本手法の奥行き位置測定精度の検討を行ったが、それらの研究成果はアイルランド共和国で開催された第9回レーザ流速計の進展と応用に関する国際会議(EALA2001)において報告した。
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