本研究では回転機械内の3次元的流動を定量的に捉えるための流速分布計測手法を開発した。平成13年度は、回転像静止法とdepth-from-defocusを用いて、比較的狭い回転-静止円板間流れのPIV計測を行い、本研究で提案した計測手法により、3次元的な時間平均的流動構造を捉えられることを示した。本年度は、観測された流れの可視化トレーサ粒子の3次元位置情報から、壁面などの影響を受けずに高空間解像度で流速を求めることのできる3次元粒子追跡法の開発を中心に行った。これは既に2次元粒子追跡法に適用されている自己組織化マップ(SOM)を3次元計測できるよう拡張したもので、処理パラメータが測定結果に及ぼす影響について検討した。性能評価は一様流モデル・立方体キャビティ内流れモデルを用いた数値シミュレーションで行い、特に重要な出没トレーサ粒子数と粒子誤追跡率との関係を明らかにした。立方体キャビティ内流れモデルの試験では、非一様な速度勾配をもつ流速場が概ね良好に求められることを示す中、流速の大きな領域で誤差の増大が認められた。一方、回転-静止円板間流れでは外側内壁近傍の狭い領域に、回転円板から静止円板に向かうダウンストリームが生じるが、この領域に対するPIV計測を行い、とりわけ3次元性の強い流れ場を定量的に評価した。全体として、回転機械内の流れの観測方法・単眼計測による奥行き情報の取得法・3次元粒子追跡法に分けて検討し、一連の計測方法を確立したが、奥行き情報の測定精度を一層改善することが今後の課題と考えられる。 なお、平成12-13年度に実施した回転-静止円板間流れ計測のPIV結果は、CFD結果と比較検討した上、平成14年度に第10回流れの可視化に関する国際シンポジウム(ISFV10)にて論文発表された。
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