| 研究概要 |
一本の螺旋形状をしたべん毛を回転させて水中を遊泳するビブリオ菌の運動を暗視野生物顕微鏡CCDカメラシステムによって長時間に渡ってビデオ録画し,遊泳状態を観察した.ビデオ録画した運動軌跡を解析し,個々のバクテリアの形状およびその回転速度と移動速度を同時に計測した.
バクテリアの推進運動に対するストークス流に基づく境界要素法を適用して,観察から得られたバクテリアの個別の形状を仮定し,その推進速度,べん毛モーターの回転数,運動経路を予測した.
観察結果と解析結果を比較してよい一致を得たので,単毛性細菌に対する遊泳運動はストークス方程式に基づく解析によって説明できることが分かった.
複数のべん毛を有するサルモネラ菌に対しても,同様に暗視野生物顕微鏡による遊泳運動の観察と境界要素法による解析を行った.それらの結果を比較したが単毛性細菌の場合のようによい一致が得られなかった.このことから複数のべん毛を束ねて回転させて推進力を得るサルモネラ菌の数理解析モデルに問題があると考えられる.今後,複数のべん毛が変形することを考慮したモデルに取り組む予定である.
ビブリオ菌の前進と後退運動の速度に差異が認められた.後退速度の方がかなり大きいという結果が得られている.このことについては,更に精密な実験を行い確認する必要がある.また,単毛性細菌の場合でもべん毛の変形の効果を明確にする必要が生じている.
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