本研究は低自由度のカオス力学系でその効果が示されているピラガス法が、無限の自由度を持つ流れに対して有効か否かを、粒子画像流速計(PIV)とシンセティックジェットを使った実験で検証することを目的とする。シンセティックジェットとは流れ場に吹き出しと吸い込みを交互に行い、実質的に流入流量をゼロとするもので、翼の剥離制御などに用いる研究が行われていが、真の意味でのフィードバック能動制御に成功した研究はない。本研究ではシンセティックジェットによる効果的な流れ制御法を探るとともに、ピラガス法により不安定な流れ場を安定化するために必要な条件を探る。 2年計画の初年度にあたる本年度は実験装置の設計製作とシンセティックジェット誘起流を発生させるための基礎実験を行った。近接した二つの噴口からどのようなタイミングあるいは位相でパルスを送るのが誘起流制御に有効であるかを見出すためにPTVを使った流れ場測定を行った。その結果誘起流を偏向させるために必要な条件・噴流アクチュエーターの制御方法などを見出すことができた。 また、当該研究室で継続して進めているPIVを実時間フィードバック制御の状態推定に利用する技術開発も進展したため、2次元計測では10Hz程度、3次元計測では3Hz程度までサンプリング周波数を高めることができた。 本年度の研究でシンセティックジェットの噴出方向を変えることに成功したので、次年度はピラガス法により低次元ゆらぎを持つ流れ場の安定化制御にこれらを利用する研究に入る。
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