研究概要 |
乱流の能動制御は,工学的重要性から多く研究がなされている.これまでの実験的研究では予備実験から最適入力値を求めるフィードフォワード制御が主である.しかし流れの非線形性や非定常性を考慮すると,オブザーバを用いた状態量フィードバックを適用することが望ましい.流れのフィードバック制御則に関しては,準最適制御やOGY制御などが提案され、数値計算上でのみ検証されている.しかし,流れ場全体の情報が完全に把握できていることが前提であるため,リアルタイム処理の際に起こりうる情報の欠落や誤差,無駄時間などの実用的問題点が解決されていない. 本研究の目的は,流れ場のリアルタイム・フィードバック制御を実験的に検証することである.そこで流れ場の状態量を定量的かつ瞬時に得るため,可視化画像流速計(PTV)によって算出された速度場から,ニューラルネットワーク(NN)を用いて状態推定するシステムを構築し,制御則としてピラガス法を適用した。パターン認識ツールとして定着しているNNは,入力情報に欠落や誤差がある場合でも学習時の重み付けによってある程度の識別ができ,推定器として用いた場合には雑音に強い制御システムが期待できる.またピラガス制御法は,無駄時間の存在によって起こるフィードバック制御の不安定性を制御することができる.一方,流れ制御アクチュエータとしてフルイディックノズル内に2つのシンセティックジェットを取り付けた主流偏向器を考案した.これにより対象流れ場を能動的に制御することが可能となる.このように本研究では,PTV, NN,ピラガス制御法,フルイディック付きシンセテイックジェットから構成される流れ場のアクティブ・フィードバック制御システムを構築し,自由液面流れの能動制御の実証を行った. その結果,不安定な流れ場を安定した周期運動に収束させることができた.また,不安定な流れパターンを安定化保持することにも成功した.これにより,状態推定にアクチュエータ駆動サイクルと同程度の時間を要するシステムにおいても,ピラガス法により能動制御が可能であることを示した.
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