潜水病、潜函病に代表される減圧症は、高圧環境下から常圧に戻る際、高圧下の生体組織中で溶解した呼吸器系ガスが環境圧の低下により気泡化し、血液循環系の閉塞する疾病とされている。しかし、これまで、減圧症への対応は対症療法が中心であり、その根源的な究明が期待されている。本研究は、減圧症発生機構を流体力学的に解明することを目的としている。始めに、既設の高液圧・ガス過飽和液体作成装置に、2つのローラーポンプ、管内オリフィス、分岐管等を取り付けた流動型試験装置を作成した。次に、水道水に、高圧供試ガスとしてヘリウムを溶解させたガス過飽和液体を作成した。この液体が管内オリフィスを流動する際に発生する気液二相流を管内径0.46mmの細管に分岐し、流動する気泡の運動を、高速ビデオカメラにて観察、解析を行った。実験条件としては、ガス加圧力は0.5〜3.5MPa、オリフィス部の平均流速は0.31〜1.45m/s、細管内の平均流速は0.1〜0.64m/sである。本実験より、以下のことが明らかにされた。 (1)細管内におけるヘリウムガス過飽和液流中では、0.1〜0.84mmの微細な気泡が観察される。ガス加圧力が増加するほど、気泡サイズが大きくなり、流動する気泡数も増加傾向を示す。 (2)管内径より大きい気泡は、流動抵抗および気泡後端に剥離を伴った流れが生ずるため、気泡流動速度が減じ、管内平均液流速の約40%程度となる。 (3)高ガス加圧力の条件下では、ヘリウムガス気泡の合体現象や複数気泡の連鎖的挙動が観察され、血管塞栓の原因となり得る。
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