環境の圧力変化を受ける生体組織中においては、しばしば気泡が発生し、気泡塞栓症の要因となる。本研究では、潜水病などの減圧症及び人工弁装着者の合併症(塞栓症)等に関わる流体力学的解明を目的とし、実験的研究を行った。 (1)管内径1.15mmの細管中を過飽和ガス(酸素、二酸化炭素、ヘリウム)が溶解した液体が流動する際には、気泡サイズ0.06mm〜0.84mmの気泡が発生し、気泡の連鎖的流れ、合体現象なども生ずる。これらの気泡流動は細動静脈の閉塞を誘発する要因になるものと考えられた。 二酸化炭素が溶解した液体中においては、酸素、ヘリウムに比べて、発生する気泡の大きさ、気泡数は大となる。 (2)擬似筋肉モデル及び擬似脂肪モデルなどの生体軟組織中においても、高圧ガス環境下においては気泡が生成される。擬似脂肪モデル中においては二酸化炭素気泡が発生しやすく、擬似筋肉モデル中ではヘリウム気泡の数密度が高値を示す。 (3)人工弁周りの高速拍動流れに伴ってキャビテーション現象が発生することが明らかにされた。大動脈弁及び僧帽弁の閉鎖時には弁背後に爆発的にキャビティが発生する。気泡の大きさ0.2mm〜0.5mmであり、人工弁近傍の気泡移動速度は0.46m/s〜01.2m/sである。これらの微細気泡は、気泡塞栓症、HITSなどの要因になり得るものと考えられた。
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