研究概要 |
I.レーザトラッピング法を用いたマイクロバブルの力学解析 (1)血管内のせん断流れ場とマイクロバブルとの相互干渉を解析するために,固体境界近傍でマイクロバブルのレーザ捕捉を行うとともに,せん断流れ場中で,マイクロバブルがレーザ捕捉域を逃れる際の軌跡を理論的に解析した.その結果,せん断流れ場中でマイクロバブルの軌跡は,その初期半径に大きく依存すること等が示された. (2)直径100μm以下の微小毛細管を用いて,数密度を制御してマイクロバブルを発生させる方法を考案するとともに,微小毛細管から噴出されたマイクロバブルがレーザ捕捉される様子をシミュレートした.その結果,マイクロバブルの噴出速度が150μm/s程度であること,また,この噴出速度の下では,マイクロバブルの噴出位置を調整することにより,理論上マイクロバブルをレーザ捕捉可能であることが示された. (3)レーザ捕捉した単一マイクロバブルならびにレーザ捕捉下で合体する二個のマイクロバブルの挙動を観測し,それらを気泡力学に基づく数値解析結果と比較することにより,マイクロバブルの安定性に及ぼす内部気体の拡散の影響を検討した.その結果,以下の知見を得た.(i)超音波造影剤として利用されているマイクロバブルの表面張力は,水・空気系の表面張力よりも約1/800に低下している.(ii)マイクロバブルの半径に応じて,単一マイクロバブルならびに合体後のマイクロバブルには,収縮するものの他に成長するものが観測された.これは,表面張力の大きさと液体中の溶存気体の飽和度との兼ね合いで,界面での濃度勾配の符号が変化するためである. II.境界要素法を用いた微小気泡の崩壊挙動の解析 内部気体の熱移動を考慮しつつ,マイクロジェット貫通後のトロイダル気泡の力学を解析する数値計算手法を開発した.本手法を用いて,固体境界ならびに生体を模擬した弾性境界近傍での微小気泡の崩壊挙動を解析し,以下の知見を得た. (1)弾性壁の特性(特に質量)によっては,気泡が初期位置を保って崩壊する中立崩壊条件が存在する.この条件は,気泡内部の気体の熱移動を厳密に評価した場合と内部気体がポリトロープ変化すると仮定した場合とで大きく異なる. (2)内部気体が等温変化すると仮定して内部気体の圧力を決定した場合は,微小気泡の崩壊挙動を過大評価し,一方,内部気体が断熱変化すると仮定して内部気体の圧力を決定した場合は,微小気泡の崩壊挙動を過小評価することになる.
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