流体による振動の中では従来、カルマン渦による渦励振が一般的に良く知られている。それは物体の固有振動数がカルマン渦の流出振動数に近づくと、カルマン渦の流出振動数が物体の固有振動数に引きつけられる、いわゆるロックイン現象を生じる。このロックイン状態では物体の振動振幅が急激に増加し、時には大規模な事故等が誘発される場合もある。本研究では流れ方向に二次元円柱を強制振動させ円柱の加振振動数をロックイン状態の領域内外に変化させた場合の円柱に作用する流体力について詳細に調べ、ロックイン状態の領域内外の渦励振を誘発する非定常な流体力の評価を行なった。本研究で用いた風洞は、500mm×500mmの正方形吹き出し口をもつN.P.L式ブローダウン型風洞で、長さ2000mmの測定部を有している。モデルとなる円柱は直径D=50mmでアルミニウム製のものを用い、前縁より500mm下流の位置に片持ち客持された円柱を加振装置に設置し、主流方向に片側振幅1.5mmに正弦的に加振した。実験は主流速度4m/s、Re=1.32×10^4のもとで行なった。背面圧力係数と換算流速の関係を調べるとロックイン領域より前の領域では換算流速が増えるとともに背面圧力係数は上昇するが、ロックイン領域に入ると急激に低下し、ロックイン領域中央部分で最低値に達する。次に変動抗力係数はVr=1.6付近から急激に増加し、Vr=1.7でピークに達し、Vr=2.4まで急激に減少している。これより、ロックイン領域に入ると円柱に急激な変動抗力の増大が見られる。この瞬間的な抗力の増大がロックイン状態における振動の増大の原因になっていると考えられる。振動変位d/Dと変動揚力係数のリサージュ図形を調べると、ロックイン領域に入ってからピークに達する直前まではリサージュ図形は右回りを描いており、変動抗力は不安定で振動を増大させる方向に作用している。一方ロックイン領域後半以降の領域Vr=1.53では左回りを描き変動抗力は安定で減衰力として円柱表面に振動を静止させる方向に作用する。 本研究から次のようなことが明らかになった。 (1)本実験の範囲では、換算流速がVr=1.25からロックイン状態に入りVr=2.53でロックイン状態から離脱する。 (2)ロックイン状態では、背面圧力が最小になる。 (3)ロックイン状態前後を比較して、ロックイン状態離脱直前では、変動抗力は最大となり、振動振幅の増大の原因となる
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