次世代人工心臓としてインペラーのみがポンプ内で浮上し、完全非接触で回転する磁気浮上遠心血液ポンプは低比速度で小形であるため、このポンプの性能向上にはエネルギー損失の大半を占めるインペラーとケーシングの間の隙間流れの解明が重要で、得られた主な成果は(1)インペラーの羽根流路を塞いだ回転円板をインペラーと入れ替え、隙間漏れ流れのみが存在する場合について、ボリュートを通る流れのもつ角途効量保存効果ならびに旋回流による遠心力効果と漏れ流量・圧力との関係を明らかにした。さらにボリュート無しの場合についての同様の実験との比較から、ボリュートのもつ流動抵抗と旋回効果が漏れを抑えることがわかった。(2)隙間漏れの有無がポンプ特性に及ぼす影響の比較の結果、漏れのない場合、低流量域ではポンプ内面循環量の増加により圧力低下を招き、かえって不利となるが、高流量域でが、流量の増加となり一長一短があることがわかった。(3)ポンプとして動作している実機において、隙間の漏れ流れを直すにはポンプ入口に合流させず、一たん、迂回させて漏れ流量を測定した後、ポンプ入口に戻す工夫を施し、正規の途転状態と同じ流動状態で漏れ量を測定し、これとポンプ特性とを対応ずけた。(4)このポンプはダブルボリュート構造で2つの舌部をもっており、円板外周の圧力分布は軸対称ではない。この圧力を測定するために、測定孔の位置が360°回転できる装置により、円周方向の圧力分布を測定、その結果、ボリュートの形状によって圧力分布の対称性がく変わることを明らかにした。
|