低沸点成分に比べて高沸点成分液の表面張力の大きい混合蒸気系の凝縮過程において、濃度差マランゴニ効果により凝縮液表面に凹凸が生起し、擬似的な滴状凝縮などの凝縮液形態が現れ、伝熱性能の飛躍的な向上が見られる条件が比較的広範に出現する。本申請では、濃度差マランゴニ凝縮現象の熱伝達機構・特性を解明するため、混合液の赤外レーザー光の吸収特性を利用する方法により、凝縮液膜厚の変化特性の精密測定を行うことを目的として、水-エタノール濃度差マランゴニ凝縮の凝縮液膜厚さの非定常測定に関して本年度は以下の事項を遂行した。 (1)実験装置の製作:凝縮装置と工学計測系の適合性を図るための実験装置を製作した。蒸気の流入する凝縮室内の光透過経路にレーザー光に透明な部材を用いた。伝熱板としては熱抵抗を減じるため厚さを31μmの石英ガラス板を用いた。また、蒸気の冷却には通常は液体を用いるが、本測定ではレーザー光の透過性を必要とするため、液体窒素を加熱・蒸発させる低温窒素ガス噴流を冷却系に採用した。波長3.39μm赤外レーザー発振装置、チョッパー、セレン化鉛製のディテクタおよびレーザー集光用レンズ等から構成される、混合蒸気の凝縮室を透過させるためのレーザー計測系の設計・製作を行った。 (2)吸光係数の決定:試料の水-エタノール薄液膜の吸光係数を求めるため、レーザー光に対して透明な石英ガラス容器(間隔3〜50μm)に試料を封入することにより校正し、水-エタノール混合液体の広い濃度範囲における吸光係数を実験的に定めた。 (3)測定:代表的なエタノール濃度における凝縮液膜の非定常測定を実施した。滴状凝縮を示す領域における離脱液滴に掃除された直後の液膜厚さは1〜10μm程度であり、過冷度の増加とともに小さくなる。また凝縮面は常に凝縮液でぬれていることを確認した。
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