"Positive system"と呼ばれる低沸点成分に比べて高沸点成分液の表面張力の大きい混合蒸気系の凝縮過程において、主に濃度差表面張力不安定によって、表面の温度分布に起因する濃度・表面張力分布が生じる。濃度差マランゴニ効果により擬似的な滴状凝縮などの凝縮液形態が出現する。凝縮液抵抗は低減し、伝熱性能の飛躍的な向上が見られる条件が比較的広範に出現する。本申請は、濃度差マランゴニ凝縮現象の熱伝達機構・特性を解明するための研究の一環として、混合液の赤外レーザー光の吸収特性を用いる新たな方法により、本現象における凝縮液膜厚の変化特性の精密測定を行うことを目的として研究を遂行した。 測定は、水-エタノール混合蒸気の濃度差マランゴニ滴状凝縮過程のうち、離脱凝縮液に掃除された直後に短時間現れる薄液膜厚さの非定常測定を、凝縮特性を決定する主要パラメータである凝縮面過冷度と蒸気濃度を広範囲に変化させた条件の下で行った。昨年度の結果、すなわち (1)レーザー計測系および凝縮装置の設計・製作と測定精度の検討 (2)レーザー計測用凝縮装置の設計・製作、に引き続いて、本年度は水-エタノール系の濃度差マランゴニ凝縮における離脱液滴掃除過程からの凝縮液膜厚さ変化の非定常測定を行った。実験パラメータを、凝縮特性決定の主因子である凝縮面過冷度と蒸気濃度とした。その結果、濃度差マランゴニ滴状凝縮における離脱液滴に掃除された直後に現れる薄液膜あるいは液滴間に存在する液膜は非常に薄く、1μm前後であることを明らかにした。蒸気エタノール濃度の減少および凝縮面過冷度の増大に伴って液膜厚さは減少する傾向を示した。さらに、蒸気側拡散抵抗に関する検討を加え、従来得られている凝縮特性曲線の性質を明らかにした。
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