研究概要 |
本研究者は従来の研究において,熱伝導率の比較的小さい水平冷却板を用いて水溶液を凍結させると,凍結層が浮力の作用により冷却面から自然に剥離し,冷却面が常に露出した状態で凍結現象が実現できることを見いだし報告してきた.本研究は,その現象の応用・発展のための基礎資料を得ることを目的とし,水平冷却面における水溶液の凍結と剥離現象に及ぼす冷却面材質の影響などを調べた.鉛直平板における凍結剥離現象について実験を行い以下の知見を得た. 1.凍結・剥離現象に及ばす冷却面材質の影響 冷却板として,厚さ1.5mmの塩化ビニル板に0.012mmのアルミ箔を接着したもの及び1.0mmの塩化ビニル板に0.1mmの銅板を接着したものについて凍結・剥離挙動を調べた結果,表面が金属面の材質においては凝固潜熱が冷却面全体に吸収されて一塊の大きな氷結晶に成長しやすく,剥離限界熱流束が小さくなり剥離しにくくなることを明らかにした.すなわち,氷結晶の剥離現象においては,冷却板表面で局所的な温度不均一ができやすい材質が適していることを示した. 2.鉛直平板における凍結・剥離現象 鉛直冷却面におけるエチレングリコール水溶液の凍結・剥離現象について実験を行った結果,鉛直面においては氷結晶は冷却面をスライドしながら他の氷結晶と結合し比較的大きなシート状となって剥離浮上することを示した,また,剥離限界条件は冷却面における熱流束比に関係しており,鉛直冷却面においては水平冷却面よりも剥離しやすいことを明らかにした.
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