研究概要 |
近年のコンピュータの高速化および数値解析手法の充実に伴い熱対流場の数値シミュレーションが実用になりつつある.しかしながら,これを最適設計ツールとして利用しようとすると,ある状態における感度(設計変数の微小変化に対する目的関数の変化)を求めるだけでも場のシミュレーションを膨大な回数繰り返す必要があり,現在のコンピュータでも非力である.そこで本研究では,場の基礎方程式を直接シミュレーションするかわりに,その随伴問題を設定し,これを数値シミュレーションの手法を用いて求めることにより直接感度を求めることを提案する.そして,現実的計算時間で実行可能な伝熱最適設計システムの構築を目的とする. 平成12年度に得られた知見を以下にまとめる. 1.熱対流場の非線形基礎方程式を摂動近似を用いて形式的に線形化することにより,その摂動系に対する随伴方程式が得られる. 2.この随伴方程式を基準熱対流場とともに数値的にシミュレートすることにより,任意の熱および流れの境界摂動に対する熱伝達特性の変化率(感度)が得られる. 3.強制対流熱伝達問題に対しては,そのエネルギー方程式の線形性から摂動近似を用いることなく直ちに随伴方程式が得られ,この随伴系に対する数値解析は時空間を反転したシミュレーションとなる.その結果,任意の時刻における最適熱的境界条件が高々1回の随伴系に対する数値解析結果から得られる.
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