| 研究概要 |
本研究は,水素吸蔵合金を用いる冷凍機・ヒートポンプシステムなど,水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出の際の発熱・吸熱反応を利用する熱交換器を対象として,水素吸蔵合金粒子充てん層内の熱および物質移動の一般的特性を明らかにし,その予測モデルを確立することを目的としている.本年度は,LaNi_5水素吸蔵合金の平衡特性の測定と吸蔵および放出の実験ならびに簡単な物理モデルに基づく数値計算を行って,以下の成果を得た.
1.平衡状態における圧力-組成-温度の関係のデータを得,各温度で明確なプラトーがあること,および吸蔵と放出でヒステリシスがあることを確認した.得られた反応熱は-31.4kJ/molH_2である.
2.吸蔵と放出についてそれぞれ,伝熱面温度,最終平衡圧力,層厚さを変えた実験を行い,層内の圧力と温度および吸蔵量(その時点で吸蔵されている水素量)の時間変化に関する詳細な実験データを得た.
3.吸蔵速度(吸蔵における吸蔵量の時間変化割合)は,最終平衡圧力が高く伝熱面温度が低いほど大きく,また放出速度(放出における吸蔵量の時間変化割合)は,最終平衡圧力が低く伝熱面温度が高いほど大きくなる.すなわち,吸蔵速度と放出速度は,いずれも,最終平衡圧力と伝熱面温度に対応するプラトー平衡圧の差が大きいほど大きくなる.
4.吸蔵速度と放出速度は,いずれも,層厚さが厚くなるほど低下する.この層厚さの影響に関して,吸蔵・放出の発熱・吸熱と層厚さ方向の熱伝導の抵抗のみを考慮した数値計算を行い,実験データと比較して,吸蔵速度と放出速度は,いずれも,主に熱伝導の抵抗によって支配されていることを明らかにした.
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