研究概要 |
まず,テスト容器として,1本の伝熱管を有する矩形容器を製作した.容器は高さ200mm,幅100mm及び奥行き50mmで,伝熱管の外径は20mm,長さは49mmである.伝熱促進体として,空隙率0.95で平均空隙サイズが3.2mm及び空隙率0.942で平均空隙サイズが1.92mmの2種類の発泡金属板(板厚は5mmで材質はニッケル)を用意した.更に.比較のため,厚さ0.5mm,1mm及び2mmの通常の銅板も準備した.次に製作した容器を用い,伝熱促進体を伝熱管に単に接して設置し,凝固・融解実験を行った.本研究の主目的は融解促進に及ぼす伝熱促進体の効果を調べることであるが,当然,融解は凝固後しか行えないので,伝熱促進体の凝固促進への影響も調べた.なお,相変化材としては純水とエチレングリコール水溶液を使用した.また,凝固・融解現象を解析する数値モデル及びプログラムの開発,及び銅板を実器規模の氷蓄熱器に設置した伝熱促進実験も行った. これまでに得られた結果を要約すると以下のとおりである. (1)まず,相変化材として純水を用いて凝固・融解実験を行った.その結果,いずれの発泡金属を用いても(3枚重ねた15mmの厚さまで調べた),凝固・融解の双方に対して,伝熱促進効果は僅かであった. (2)次に,厚さ0.5mmの通常の銅板を1枚円筒に接して設置して実験を行った.その結果,相変化材が純水及びエチレングリコール水溶液のいずれに対しても,かなりの凝固・融解促進が得られた.銅板の厚さを1mm及び2mmと変化させたが,厚さ0.5mmの場合より幾分伝熱促進が見られた程度であった.経済性を考慮すると厚みは1mm程度で充分と考えられる. (3)開発した数値モデルを用いて,伝熱促進体無し及び厚さ1mmの銅板を設置した2つの場合に対して,純水の凝固過程を解析し,実験結果と比較した.その結果,計算で得られた凝固層形状及び凝固質量の実験結果との一致は非常に良く,本モデルは凝固過程を良くシミュレートできることが分った. (4)厚さ1mmの銅板を実器規模の氷蓄熱器に設置して実験を行った結果,上述の基礎実験で得られたと同程度の伝熱促進が得られた.また,今後の数値シミュレーションの基礎とするために,伝熱促進体がない場合の水溶液の凝固過程計算モデルの構築と実験による検証も行い,モデルの妥当性を示した.
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