研究概要 |
本研究の目的は,サブクール沸騰限界熱流束に対する影響因子として,サブクール度のほかに気体溶解量を考慮して,この2つのパラメータがそれぞれ限界熱流束に与える影響を実験的に把握し,限界熱流束機構の解明に必要な情報を提供することにある.本年度は,(1)気体の溶解度を測定する方法を確立する,(2)脱気がどの程度まで可能であるか調べる,(3)限界熱流束が気体溶解度の影響をどの程度受けるかを大まかに把握する,の3点について,試験液体に水を使って研究した. 気体は,液と平衡な気相における気体の分圧に比例した量までその液に溶解できるという,ヘンリーの法則を利用して,沸点まで液温を上昇させたときに追い出される気体の量を捕集・測定して,元の液に溶解していた気体量を決定する.このとき,捕集した気体の温度を正しく測定する必要があるが,その方法も確立した. 本研究では,伝熱面(通電加熱された水平円柱)に,下方から1cm/sのオーダの低速でサブクール液を供給することで,サブクール度を高い精度で特定する方法を採る.そのため,全体で20l程度の液体を内蔵した循環ループを用いる.このような場合でも,いくつかの容器の内部に形成される液面を,沸点まで加熱することで,0.5cm^3/l程度(20℃における空気の飽和溶解度の数十分の一)まで溶解度を下げることができることが分かった. 十分に脱気した水と二酸化炭素を十分に溶解させた水を用いて,サブクール度30Kで伝熱特性の測定と流動状況の観察を行った.気体が大量に溶存することによって限界熱流束が1/2程度になることが分かった.また,気体が大量に溶存する場合,限界熱流束の70%程度まで,伝熱面上に直径1mm程度の気泡が定在し,その周りにマランゴニ対流が生じていることが観察されたが,これは,十分脱気した場合に観察された,気泡の間欠的な成長・収縮とは異なった状況であった.
|