研究概要 |
平成12年度は,有機塩素系化合物の熱力学定数を分子軌道法により推定するとともに,熱力学平衡解析により都市ゴミ燃焼温度領域における塩素化合物の生成量を予測し、代表的同族体の生成量の比較を行った。 1.分子軌道法によるダイオキシン類異性体の熱力学定数の算出から・・・(1)熱力学的性質を評価する計算ソフトCHETAHにより算出したクロロベンゼン類(CBs)とクロロフェノール類(CPhs)の代表的な化合物の熱力学平衡解析を行い、塩素化度の高いCBsやCPhsは高温でも比較的安定であることを見出し、またGroup Additivity Methodにより算出されたダイオキシン類も同様の傾向を示すことを見出した。(2)さらに、燃焼の冷却過程ではOCDDの方がTCDDよりも早い段階で形成されことが予測された。(3)半経験的分子軌道法に基づくPM3により算出されたPCDD、PCDFの一連の熱力学定数を基に、ダイオキシン同族体のガス相における平衡濃度を比較した結果、PM3の場合も(1)の場合と似た傾向を示した。(4)また、高精度の熱力学的性質を評価するため、分子軌道法に基づく化合物の構造解析・生成エネルギー計算・反応機構解析等々、広範に評価する高精度化学計算ソフトGAUSSIAN98を用いて、abinitio法と混合法CBS-4Mについてo-クロロベンゼンの熱力学的性質の評価を行ったところ、CBS-4Mにおいて(1)、(2)を含むその他の方法よりも精度高く標準生成エネルギーを算出できることを見出した。 2.H/C/N/O/Na/Si/Al多元素・多相化学平衡計算によるダイオキシン発生・制御メカニズムについて:(1)ダイオキシンは700K以下の温度において発生しやすく、都市ゴミ焼却過程におけるダイオキシン発生は燃焼領域での成分の不均一性に基づくことが分った。(2)さらに、有機塩素化合物に加えてNaClのような無機塩素化合物もダイオキシン発生の塩素源となることが分った。
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