研究概要 |
実施初年度はいろいろな現象について単純な系で数値解析を行い状況を把握した.以下に,数値解析結果を項目別に述べる. (1)ソルトフィンガー現象 河川水の表面に流れ込んだ工場温廃水は熱の拡散により密度勾配が不安定となりソルトフィンガー現象を起こし速やかに工場温廃水と河川水が混合する.ここでは温塩水(上)と冷水(下)からなる静止二層系モデルでソルトフィンガー現象の数値解析を行った.その結果,上層と下層ではフィンガーの数が異った.浮力比(または濃度)が大きくなると,時間的に早くソルトフィンガー現象が起きたが,フィンガーの形はほぼ同様であった.Ra(対流の激しさ)が大きくなると,温度勾配が急になりソルトフィンガー現象がより顕著になりフィンガーの数も多くなった.3次元解析では,二層境界から離れた上下のフィンガー部分は規則正しい配列をした. (2)プルーム現象 煙突からの煙,都市の温暖化,海底火山等では上昇流(プルーム)ができ有害物質が環境に放出される.ここでは正方形容器の下面すべてあるいは一部を加熱した場合にできるプルームにおける二重拡散についてRa=10^5で数値解析を行った.下面すべてを加熱すると,下面近くに温度成層ができ,それが少しずつ変形し中心の強い1つのプルームと周辺の複数の弱いプルームが成長した.下面の一部加熱では温度成層ができず1つあるいは4つのプルームが下面から直接的に早く成長した.一部加熱の方が全面加熱より物質移動は強くなった. (3)水溶液中での凝固濃縮 水の凝固・融解による蓄熱を利用して夜間電力の平準化が行われている.水の代わりに廃水を用いることにより有害物質の濃縮も同時に行なうことが研究されている.ここでは塩水中で凝固が起きるときの二重拡散自然対流の数値解析をRa=10^5で行った.凝固の場合は,相境界近くに薄い濃度境界層ができ溶質は系の下部に蓄積された.融解の場合は,厚い濃度境界層ができ溶質は系全体で成層化した.
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