ハードディスクドライブや人工心臓用のアクチュエータとして、浮上モータ(セルフベアリングモータ)の適用が提案されている。これらのシステムは、小型化・低消費電力化が望まれており、特に小型化は最重要課題である。しかしながら、浮上モータは能動制御型のシステムであり、フイードバック制御のためのセンサを必要とする。センサのノンコロケートな配置は制御特性を悪化させる原因になり、設置空間はより小型化が望まれるシステムにとって大きな障害になる。そこで本研究では、外部センサを用いずに浮上モータの制御用コイルをセンサとしても用いる、差動トランス方式のレフセンシング制御を提案する。 平成12年度は、モータリングコイルの各相と浮上コイルの各相間の相互インダクタンスが、ロータのラジアル方向の変移に対し線形な出力特性を持ち、差動トランス方式のセルフセンシングが可能なことを理論および実験から明らかにした。平成13年度は、ノイズ対策、新たな共振回路の挿入や出力バンド幅の調整などを行い、セルフセンシングによる静止状態での浮上制御に成功した。しかしながら、変位情報を持つ搬送波成分の作動出力は、ロータに貼り付けた永久磁石の位置や制御電流の変化に完全に独立ではなく、その影響を受けて変動するため、最終目的である浮上回転の実現には至らなかった。ただし、浮上のみであればコロケートセンサとして良好な特性を示しており、浮上モータのセルフセンシングによる制御が実現可能であるという十分な見通しを得た。 今後は、上記の変動とセルフセンシング出力間のダイナミクスについて解析を行い、安定した浮上回転の実現を目指すとともに、アキシャル型の磁気浮上モータについても、パルス幅変調方式によるセルフセンシング化の実現を目指している。
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