研究概要 |
本研究は時間遅れを含む力学系に見られる分岐現象を理論的に論じた。一般的に時間遅れを含む機械振動系の運動方程式は非線形微分差分方程式で記述され,その特性方程式には超越項が含まれるために特性根さえ求めることが困難である。このような問題に対して,原系の運動方程式に関数微分方程式系に対する平均法を適用し,基本調波振動および2,3次高調波振動の平均化方程式を得た。この結果,この平均化方程式の固有値および定常解の位相をもとに局所分岐理論を適用し分岐集合を求めた。まず,一般に広く知られているsaddle-node分岐やHopf分岐および,saddle-node分岐と位相的に同じで安定性が異なる分岐が存在することが明らかになった。さらに,これらの分岐曲線が,ある派生点から派生するという興味深い結果を得た。本研究で得られた分岐集合と時間遅れを含まない同型の振動系に見られる分岐集合と比較しても,複雑な構造である。 また,応答曲線および,解軌道を用いて,解空間における定常解の定性的特徴を明らかにし,次のような結果を得た。まず,遅れ時間が小さい場合,パラメータのわずかな変化でさまざまな分岐現象が発生するため,解空間は構造不安定であることが明らかになった。このとき,安定な定常解が存在するため系自体は安定である。これに対して,遅れ時間が大きい場合,パラメータの変化に対して,解空間は構造安定であるが,不安定な定常解が現れるため,系自体は不安定であるといった結果が得られた。 以上の研究成果を,国内講演会にて発表した。
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