研究概要 |
近年の機械の高速化と軽量化の時代を背景に,鋼板や紙などの様な薄い柔軟体が,巻き取りローラや高速コピー機入口などの狭い拘束領域(吸い込み口)に高速で引きずり込まれる際に,その終端部分が激しく自励的な不安定振動を起こす振動問題が,急浮上して来ており,鋼板や紙などの高速送搬と軽薄化は技術的障壁に直面している. 本研究は,この不安定振動現象の発生メカニズム解明のために,これまでに構築したマルチボディダイナミクス解析手法を用いた物理モデルを発展させて,より厳密な物理モデルの構築を行った.具体的には, (1)移動柔軟体の大きな回転運動(大変形)と有限ひずみ効果を,絶対節点座標系によって厳密に取り扱える物理モデルを構築した. (2)吸い込み口における複雑な非線形弾性衝突の影響,および柔軟体と流体流れとの流体・構造連成効果の影響を考慮した物理モデルを構築した. また,構築した物理モデルを基に数値計算プログラムを構築した.そして,この構築した数値計算プログラムを用いた数値シミュレーションを行い,移動柔軟体に発生する不安定振動の特性を数値計算により明らかにした. さらに,拘束領域に引き込まれる移動柔軟体として薄い板を急速に拘束領域に吸い込む(巻き取る)実験装置を設計・製作し,移動柔軟体に発生する不安定振動の振動学的特性を,レーザ変位計と高速ビデオカメラを用いた実験により明らかにした.そして,得られた実験結果と数値計算結果を比較して,構築した物理モデルの妥当性を確かめた.
|