研究概要 |
針対平板電極系放電場は,オゾン生成装置やレーザプリンタの帯電器などに利用されている.これらはいずれも気体放電を利用するものであるが,放電に伴う静電力によって針電極が変形や特異な振動を生じることがある.本研究は、このような針対平板電極系における針電極の力学を理論と実験の両面から解明し,放電系の各パラメータの影響を明らかにし、さらに、振動の抑制策を提案することを目的とする.本研究によって以下のような知見が得られた. (1)静特性 コロナ放電のない静電場では,電極が互いに吸引する方向の静電力が作用する.コロナ放電開始後の静電力は,正負ともに,印加電圧を高くするにしたがってコロナ開始前とは反対の,針電極を押し上げる向きに働く.コロナ放電時の静電力の向きが逆転するのは,コロナ風の影響が大きい.正負コロナともに,針の直径やギャップは静電力にはほとんど影響を及ぼさない. (2)動特性 低剛性支持された針電極に生じる動力学現象として,パルス状のコロナ電流によって生じる強制振動と火花放電時に生じる放電連成振動を観測した.前者はイオン風の反力がパルス状に変化することによる一種の強制振動と考えられる.後者も印加電圧の変化にともなうイオン風の反力の変化による強制振動と火花放電の連成振動と考えられる. (3)特異な力学現象 本研究の過程で次のような3種の特異な力学現象を発見した.その第1は,水を平板電極にすると,静電力やコロナ放電時のイオン風によって水面が変化する現象が生じ,さらに火花放電が生じると,水の重力波が生じる現象である.第2は、極低剛性の針電極にフラッタが生じる現象であり,マイクロマシンの駆動源への適用が考えられる.第3は、絶縁チューブの中を水で満たした針電極では、静電力によって水を吐出する現象であり,新しいインクジェットプリンタや生化学用微小液滴分析装置への適用が考えられる.これらの現象の解明と応用は今後の課題である.
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