スキーターンのシミュレーション法を実用化に関連する研究を行い、下記の成果が得られた。 1.エッジング動作の測定 スキーヤーのエッジング動作を2台のカメラで撮影し、画像解析装置を用いてビデオ画像から各フレーム(1/30秒)毎の各関節の三次元座標を測定した。基礎スキーを専門とするスキーヤーと普通のスキー滑走を得意とするスキーヤー各一人が沈み込み抜重動作、立ち上がり荷重動作、大回りパラレルターン動作、小回りパラレルターン動作を行った場合を測定した。 2.スキーヤーの力学モデルの構築 上記1.の測定結果に人体各部の部分質量を考慮してスキーヤーの重心位置と重心の加速度を計算するとともに、スキーヤーからスキー板に作用する垂直力を求めた。この垂直力は荷重センサでの測定結果と良く一致することが判明した。この結果は、マルチボディ・システムでスキーヤーをモデル化することが可能であることを示している。エッジング動作の測定結果をもとに作成したスキーヤーのモデルを、平成13年3月23日に日本スキー学会で発表する(内容を精選して日本スキー学会誌に投稿)予定である。 3.スキー板の形状と機械特性の測定 モデル毎に数種類のスキー板の形状(長さ、幅、厚さ、キャンバー高さ)と機械特性(曲げ剛性分布)を測定し、データベース化した。このデータを用いてスキーターンの解析を行った結果、スキーターンの特性(ターン軌跡の曲率半径とスキー板の回転の速さ)はスキー板のモデルと密接な関係のあることが判明した。この結果は、平成12年11月12日に日本機械学会主催のジョイントシンポジウム2000で発表した。また、内容を精選して、研究速報として纏めた(次ページの11.研究発表を参照)。 4.スキー板の断面構造に関する研究 スキー板の設計においては、スキー板の曲げ剛性分布を予測することは非常に重要である。スキー板の断面構造から梁の曲げ変形理論を用いて計算で求めた曲げ剛性の値は実験で測定した値と良く一致することが明らかになった。平成14年度には、この手法を拡張して、板の曲げ変形理論を用いて曲げ剛性を予測する計算方法を開発したいと考えている。 5.スキーロボットによる滑走実験 アルミ製のミニスキー板にスキーロボットを搭載して滑走実験を行った。スキー板の長さのみを変化させた場合、スキー板のショルダー幅のみを変化させた場合のいずれの場合においても、従来のロボット実験の場合よりも精度の良い結果が得られた。平成14年度はスキー板の種類をさらに増加させて実験を行う予定である。 なお、上記1.および2.の研究にノンリニア編集装置(平成12年度購入設備)を使用した。
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