平成12年度に引き続いて、スキーターンのシミュレーション法の実用化に関連する研究を行った。得られた主要な成果を下記に示す。 1.エッジング動作(スキー操作)の測定 昨年度と同様に、実験室内でのスキー操作を2台のビデオカメラで撮影し、画像解析を行うことにより、エッジング動作(スキー操作)のデータベースを充実させた。 2.スキーヤーの力学モデルの構築とスキー操作モデルの制作 マルチボディ・システムでスキーヤーをモデル化する基本は昨年度の研究でほぼ完了した。今年度はさらに細部(例えば、スキー靴の底面と雪面の角度等)を考慮可能なスキーヤーモデルを制作した。上記1.のスキー操作を参考にして、開発したスキーヤーモデルが行うスキー操作モデルを制作した。また、実際のスキー場で録画したスキー操作、あるいは市販ビデオのスキー操作を参考にしたスキー操作モデルも制作した。以上の結果は、昨年度の結果とも合わせて日本スキー学会誌に投稿予定である。 3.スキー板と床面の連成運動に関する研究 弾性床面上に静止しているスキー板に荷重が作用した結果生じるスキー板と床面の連成運動を実験および数値計算により解析した。重りの落下による衝撃荷重が作用する場合、およびスキーヤーのスキー操作の結果生じる荷重が作用する場合を研究したが、数値計算結果と実験結果はよく一致した。この結果、スキーターンのシミュレーション法を構成している様々な数値計算法の一つである、スキー板の曲げ変形の計算法の妥当性は確認できた。この結果は平成13年7月スイス国チューリッヒ市で開催された国際学会「XVIIIth Congress of the ISB International Society of Biomechanics」で「Studies on skier's ski control and ski motion」と題して発表した。 4.スキー板の形状と機械特性の測定 昨年度に引き続き、多くのスキー板の形状と機械特性を測定し、スキー板の形状・機械特性のデータベースを充実させた。これらのデータは「エッジング動作(スキー操作)評価ソフト」用のデータとして、あるいはスキー板設計用のデータとして有用であり、一連の研究に活用している。 5.スキーターン特性を考慮したスキー板の設計法の提案 スキーターン・シミュレーション法を応用することにより、スキーターン特性を考慮してスキー板を非常に効率よく設計できることが明らかになった。初期の成果は平成13年11月カナダ国モントリオール市で開催された国際学会「International Conference on Multidisciplinary Design in Engineering CSME-MDE2001」で「New Approach for Design of Skis」と題して発表した。また、最新の成果は平成14年7月オーストリア国、リンズ市で開催される国際学会「International Conference on Mechatronics MECH2K2」で「DESIGN OF SKI REFERRING TO CHARACTERISTIC OF SKI TURN」と題して発表する。 6.スキー滑走実験 スキーロボットを用いたスキー滑走実験を行った。シミュレーションは水平面上での滑走であり、滑走実験は斜面での滑走である。両者の比較から、シミュレーション法の限界が明らかにされた。
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