移乗介助の動力学的解析と支援装置の設計(介護者の負担軽減と患者の自立を目指して)

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12650239
• 研究機関: 高知工科大学
• 研究代表者: 井上 喜雄 高知工科大学, 工学部, 教授 (50299369)
• 研究分担者: 高坂 要一郎 細木ユニティ病院, 院長 ; 谷岡 哲也 徳島大学, 医学部, 助教授 (90319997) ; 甲斐 義弘 高知工科大学, 工学部, 助手 (00320119)
• キーワード: 腰痛 / 動力学 / 力学的相互作用 / 移乗介助 / 推定 / 関節モーメント / 床反力 / 動作

研究概要

前年度までの研究を元に、介助者役の被験者として介助経験のない健常男性2名と看護婦2名、患者役の被験者として健常男性1名による,ベッドからのだきおこしの実験を行い、床反力と3次元動作解析装置の計測結果と骨格の多体系の力のつりあいから腰部に作用する力とモーメントを導出した.その結果と動作のビデオカメラでの撮影結果とを対比させた結果、腰痛と密接な関係がある腰部のモーメントが最大になるのは、患者の上体がベッド部より浮き上がり、患者の上体の重量が介助者に加わった時という場合が多いことがわかった。また、そのモーメントの大きさは、抱き上げを行う場合の被験者(介助者と患者)の相対的な姿勢にも大きく影響されていることもわかった。以上のように、移乗時の動作を動力学的に的確に評価するには、床反力の情報と姿勢の情報が非常に重要であるが、一般に用いられている床反力計は、据え置き型であり移動が簡単でないため、使用場所などに大きい制約をうける。そこで、昨年度からの継続で、履物に内蔵した圧力センサの出力を重回帰分析を用いた信号処理による推定を行う方法の検討を行った。これまでは、一人の人間に対してのみしか適用できなかったが、本年度の研究により、同じ履物を足のサイズの異なる複数の被験者に適用した結果、まだ十分ではないが、被験者ごとに重回帰分析によるパラメータ同定を実施すれば、ある程度の精度を確保できる見通しを得た。また、足の動きについても、一般的な歩行やすり足などの場合でもある程度床反力が同定できる見通しを得た。また、これらの情報から、筋骨格モデルを用いて筋張力を推定することも試みたが、これについてもまだ問題が残っているものの、ある程度現象を説明できることがわかった。また、3次元の動作の計測についても、複数のカメラを用いる大規模な装置ではない1台のカメラによる簡易な装置による計測技術について検討を行った結果、条件は限られるが、大まかな足の動作についてはとらえることが可能であることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Kai, Y., Tamoka, T, Inoue, Y: "Prevention of a patient's falling by using a sensor controlled ambulation support machine ; Analysis of leg mustcle action based on the musccule-skeletal model"Proc. of 1^<st> Asian Conference on Multibody Dynamics. 86-96 (2002)
• [文献書誌] Inoue, Y., Kai, Y.: "Study on the dynamics of the golf swing and the mechanism of the wrist turn"Proceedings of the 4th International Conf. on the Engineering of Sport. 680-687 (2002)
• [文献書誌] 甲斐義弘, 井上喜雄, ほか6名: "患者の症状を考慮した電動歩行支援機の動作制御モードの検討(患者転倒時の下肢の筋張力に基づく検討)"日本ロボット学会20周年記念講演会論文集. (CD-ROM). (2002)
• [文献書誌] 松田拓也, 甲斐義弘, 井上喜雄ほか: "足底圧計測装置による足関節トルクの推定"日本機械学会第2回福祉工学シンポジウム講演論文集. 301-304 (2002)
• [文献書誌] 松田拓也, 甲斐義弘, 井上喜雄ほか: "足底圧計測装置による足関節モーメントの推定(規制・負荷歩行における推定)"日本機械学会中国四国支部講演会論文集. No.035-1. 401-402 (2003)
• [文献書誌] 森井康友, 井上喜雄, 甲斐義弘ほか: "単眼視動作計測装置による簡易3次元歩行計測"日本機械学会中国四国支部講演会論文集. No.035-1. 397-398 (2003)