研究概要 |
ジェスチャや視線などの非言語的行動を利用するヒューマンインタフェースの研究が盛んになっている.人間同士の場合は無意識的・非意図的に現れる非言語的行動が重要な役割を果たしているが,これまでのインタフェースでは機械操作を意図して意識的に行う非言語的行動しか考えていない.そこで,無意識的な非言語的行動を意識的なものにあわせて利用することにより,さらに有効なインタフェースが実現できないか検討する.今年度はこの考えに基づく2つのシステムを開発し,有効性を検討した.一つは歩行者の顔の向きを見て避け方を変える知的車椅子である.近づいてくる歩行者の顔が車椅子の方を向いていれば歩行者は車椅子に気付いていると考えられる.違う方向ばかり見ていれば気付いていない可能性が高い.後者の場合は車椅子から先に避けるが,前者の場合は人間が避けてくれるか観察を続ける.このような方法でスムーズに歩行者の間を走行できる車椅子を実現した.この場合,歩行者は車椅子の存在を気付いていることを教えることを意識して顔を車椅子の方に向けたわけではない.しかし,この顔の動きが車椅子の適切な動作への指示になっている.もう一つは高速に多量の情報を見ることのできるブラウザである.インターネットで検索した個々の結果が一つのウィンドウになり,それらが横3列に高速に下から上へ多数流れる.それを見る視線の動きの速さに応じてスクロールの速度が変わり,あるウィンドウを注視すると,動きが止まり,そのウィンドウが拡大され詳細情報が表示されるようにした.これも,目を動かすのはウィンドウの中身を見るためで表示の制御を意識したものではないが,それを表示制御に利用することにより,有効なインタフェースを実現している.以上は無意識というより,それを意図していない行動と呼ぶべきかもしれないが,提案のアプローチの有効性を示すことができた.
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