研究概要 |
研究代表者らが開発している面駆動型ソフトアクチュエータの原理を応用して,ゴムボールを用いた空気圧駆動介護支援ベッドを試作した.ゴムボールの組み合わせは上下2段構造であり,409個のソフトテニスボールにより構成される.上段ボールが人体と接触し,上下段のボールはベッドの用途によってそれぞれ異なる役割を果たす.本研究では,床ずれ防止を目的とした体位変換と同等な機能を実現するため,開発したベッドの人体搬送性能を実験により考察した. 具体的な内容と得られた結果はつぎの通りである. 面駆動型アクチュエータと同様,下段ボールの膨張・収縮により上段ボールの揺動運動を制御し,上段ボールにより人体を支持するとともに搬送方向への進行波を生成する.試作したベッドにおいて,ベッド上に横たわる人体を2.5mm/s程度の速度で搬送可能であることが確認された.そこで,ベッドを縦(長軸)方向に3分割し,それぞれの部分の搬送方向を縦横に変化させることにより,床ずれ防止のための代表的な体位変換である30度側臥位の実現を試みた.これに対して,研究代表者らが独自に開発した空気圧ソフト触覚センサを用いて肩部と腰部の体圧分布を測定した.その結果,30度側臥位とほぼ同等な体圧分布が得られ,開発したベッドの体位変換作業の支援への応用の可能性が示された. この種のベッドには高速の搬送速度は不要であり,毎秒数ミリメートル程度の動作で十分である.以上により,本研究で開発したベッドの床ずれ防止を目的とした体位変換機能は十分に実用的であると考えられる.なお,現状では,ベッドと人体の接触部にアクリル樹脂板を挿入しているが,ソフトアクチュエータの特徴を活かすためにはより柔軟なゴムシートなどの使用が必要である.さらに,車椅子などへの移乗作業を支援するような機能の拡張も今後の課題である.
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