研究概要 |
本研究では,人間の住環境下において人間のような多様な運動が可能な2足歩行ロボットを開発し,2足歩行のメカニズムを分析および感情(嬉しさ,悲しさ,怒り,誇り,等々)を身体表現で表す制御則を考案し,その有効性を実験により確認することを目的とする.ロボットの機械メカニズムをもとにした運動方程式と人間の心理モデルをもとにした情動方程式の融合を図り,定量化する.これらの感情表現が数学的定量化により,2足歩行ロボットの冗長部分のどのような運動と関係しているのかを明らかにし,表現を伴う2足歩行の実現を目指す.2足歩行ロボットの感情を身体表現で表すために,現在の2足歩行ロボット2号機のモデルをコンピュータシミュレーションを通じて,簡単な感情表現に対してロボットの体幹運動と歩行がどのように関係しているのかを検討した.その結果,人間のように四肢の運動と体幹の運動により,感情を実現するためには,上体部ピッチ,ロール,ヨー軸のモーメント発生が可能な体幹およびアームの肩の部分に自由度の増設が必要となることが分かった.そこで,平成12年度では,次のように研究をおこなった.(1)従来の2足歩行ロボットの設計仕様に基づいた新上体部歩行安定化補償機構また新肩と腕機構の設計仕様およびモデル化を決定した.(2)歩行安定化モーメント補償のために必要な力学的仕様を満たしつつ,従来の下半体と統合可能な歩行安定化補償機構を開発した.また,従来の運動制御方式の改良のために新たな歩行安定化補償機構の機械設計,組立し,静・動的なモデルの運動方程式を導出した.(3)2足歩行ロボットの身体表現による感情を表すために,心理学に用いられるモデルを基にした情動方程式を導出した.本年度開発した2足歩行ロボットの上体部を用いて,感情を表す単純な実験をおこなうことにより,感情表現が可能な機械のメカニズムおよび心理モデル,そして感情表現に対する基礎論を構築した.
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