研究概要 |
超音波モータ(USM)は小形軽量,低速で高トルク,高応答性などの特徴をもち,ステータとロータが密着していることから静止時において摩擦力による自己保持特性をもつ.このUSMをロボットハンド用アクチュエータとして用いると,物体を把持したまま力を調節する機能が期待できる.しかし,USMのもつ自己保持力に着目した力制御に関する報告は少ない.本研究では三個の振動片形超音波モータで円柱状物体をつかんで回す際に,進行波形超音波モータによる把持力の制御を目的として実験を行い,以下の結果を得た. 進行波形超音波モータのトルク制御にON-OFF形のPWM(パルス幅変調)方式を用いると,USM特有の大きな自己保持トルクが活用できるが,一周期中のON時間(進行波)の割合であるデューティ比αに対するトルクの関係は非線形で,ヒステリシスも大きい.また,スイッチング周波数が高いfs=10kHzでは,小さいデューティ比αにおいて出力トルクが零に近くなる不感帯を生じることがわかった.このため,PWMのOFF時に定在波を導入する定在波導入形PWMを提案する.PWMのOFF時に定在波を導入すると,摩擦力による自己保持力が低減されて進行波のデューティ比αに対するトルク特性は線形性を示すことが明らかとなった.しかし,スイッチング周波数によって,超音波モータの駆動特性は異なる. スイッチング周波数が低いfs=100Hzでは,モータ自体の振動が激しく,ハンド部が振動して物体の把持に適していない.fs≧1kHzでは,デューティ比αに対するトルク特性は良好な線形性を示すが,fs=500Hzの場合,定在波がモータの駆動力を低減させてしまうことが明らかとなった.この場合,進行波のOFF時に導入する定在波の振幅を抑えると,トルク特性は良好な線形性を示す結果が得られた.成果を日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2001で発表予定.
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