研究概要 |
近年,SPM(suspended particulate matter)の弊害が注目されるようになった。この研究ではSPMの中で最も弊害が大きいサブミクロン域の微粒子を,通常の集塵機でも容易に捕集できる直径数μmの粒子に静電的に凝集させることにより,微粒子の捕集効率を向上しようとするものである。 捕集核となる粒子を強く帯電しておくと,付近の微粒子は静電気力を受ける。静電気力には分極力も含まれ,これにより無帯電あるいは同極性に帯電した粒子同士にも強い引力が作用する。しかしこの作用を有効に引き出すためには2粒子を十分に接近させる必要がある。この目的に,捕集核粒子を強く振動させたり,あるいは適当な周波数の音波を作用させることにより,捕集核の周りに音響流を発生させ,微粒子を捕集核の周りに運搬させる。まず,流体力学的な考察により,振動粒子の周りに誘導される流れを特異摂動法によって解析し,粒子径に比較して振幅が大きい場合にも破綻しない摂動解を見つけた。また電気力学的な計算で高次の分極力の正確な計算法を明らかにして,捕集核の周りの微粒子の運動を精密に追跡する計算を行った。この計算を捕集核粒子が振動の半周期で微粒子を捕捉できる体積(凝集体積)の見積に応用し,既存のモデルの不備を補った。その結果,粒子振動で発生する音響流が凝集速度に与える効果が非常に大きいこと,粒子の荷電が凝集速度の促進に大きな効果があることなどを明らかにした。 実験的には凝集速度定数を単一の捕集核粒子の成長速度から実測する装置を製作し,多数の測定を行った。凝集速度定数の実測値は全体的に理論値よりも数倍大きい。これは現実の凝集空間には気流の乱れが存在し,その流れの振動軸に直交する成分が凝集に寄与した結果と考えられる。中には2×10^<-3>cm^3s^<-1>を超えるものも観測され,この値は音波凝集で予測される値の数十倍にも及び,この凝集法が予測以上の効果を発揮するものと期待できる。
|