研究概要 |
前年度と同様、高温超伝導体ケーブルの基礎特性を得るため、その基盤となる薄膜試料をスパッタ法により作製し、高品位薄膜の作製条件を検討した。ターゲットには、Y-Ba-Cu-O(YBCO)の焼結体を使用し、純酸素ガス中におけるdcスパッタリングにより、加熱されたMgO(100)及びSrTiO_3(100)単結晶基板上に薄膜を育成した。試料の結晶相の同定・格子定数・配向性等をX線回折法から解析し、薄膜表面を原子間力顕微鏡にて観察した。また超伝導臨界温度T_cと超伝導臨界電流J_cを四端子抵抗法により測定した。今年度は、ケーブル特性として最も重要な要素であるJ_c特性に焦点をあて、基板表面状態及び基板材質が及ぼす効果を検討した。その結果、MgO(100)基板上ではスパイラル成長したc軸配向のYBCO相が成長する。60-90秒の酸エッチング表面処理を行ったMgO(100)基板上では、YBCO相の成長形態が規則正しいピラミッド状に変化し、c軸配向度とJ_cは向上する。YBCO相と格子定数が整合するSrTiO_3(100)基板上では,酸エッチング処理を施さなくとも,表面にピラミッド状のYBCO相の成長が見られ、高いc軸配向度と高J_c特性を示す。したがって、MgO(100)基板では表面上の加工歪み層を除去することにより、高c軸配向度のYBCO相を成長させることができ、その超伝導特性がSrTiO_3(100)基板上で得られたものに近づくことを明らかにした。
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