研究概要 |
超伝導変圧器,超伝導限流器,超伝導ケーブルなどの超伝導応用電力機器は,相当の高電圧で運転されることが想定されており,超伝導機器といえども絶縁設計が重要な課題である。他方,液体と固体絶縁体で構成される複合絶縁では固体表面に発生する沿面火花電圧によって機器の耐電圧が決定される。このような背景のもとで,本研究は極低温冷媒中(液体窒素,液体ヘリウム)における沿面火花電圧を測定し,絶縁設計の基礎データを提示することを目的に行われた。本年度はケーブル端部の構造を模擬した絶縁試料にインパルス電圧を印加して50%沿面火花電圧を測定した。電圧波形は開閉サージを模擬した波形(250/2300μs)である。おもな成果は次のとおりである。 1.液体窒素および液体ヘリウム中において,ギャップ長が増大してもインパルス電圧による50%沿面火花電圧は僅かに上昇する程度である。すなわち,50%沿面火花電圧はギャップ長に対して強い飽和性を示す。 2.液体ヘリウム中での50%沿面火花電圧は液体窒素中の約1/2である。 3.液体窒素中では,ギャップ長が短い範囲での正極性50%沿面火花電圧は負極性の場合より高いが,ギャップ長が大になると逆転して負極性50%沿面火花電圧の方が高くなる。液体ヘリウム中では全ギャップ範囲で正極性50%沿面火花電圧の方が高い。 4.固体絶縁体の固有容量の増大に対して,50%沿面火花電圧は減少する。この減少傾向は液体窒素中よりも液体ヘリウム中の方が強い。 5.50%沿面火花電圧とギャップ長の関係,50%沿面火花電圧と固有容量との関係を近似式で表すことができる。 6.前年度における交流,直流電圧での結果との比較から,ギャップ長および固有容量に対するインパルス50%沿面火花電圧の特性は,交流,直流電圧の場合と同じ傾向を示していることが明らかになった。 以上の結果より,絶縁耐力向上のためには,ギャップ長の増大よりも固有容量を減少させる絶縁構造の方が有効であると結論される。
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