平成12年度は、本研究の中核的要素である、4極3自由度電磁石の設計と製作の浮上制御に関して集中的な作業を進めた。制御のアルゴリズムとしては、Kessler標準形に基づく古典的なI-PD制御系、オブザーバを用いた状態フィードバックの双方についてシミュレーションおよび実験を行い、実用的に十分安定な制御が行えることを確認した。また制御目標も、ギャップ長指令ヘの追従、ゼロパワー制御の双方に成功し、さらに外乱オブザーバの導入も行い、オブザーバの機能を定性的・定量的に周波数特性の解析などを通じて論じた。さらに、リニアモータとの組合せに関して生じうる問題点を整理し、その対策を検討した。具体的には: A)関連研究を行っている他大学の研究室と協力し、二次元リニアモータ電機子の仕様を詳細に検討した。 B)電機子磁束が浮上系制御ヘの外乱となることを考慮し、磁束外乱も力外乱と一緒にオブザーバで推定し、フィードフォワード保障する方法を考えた。 C)上記の電機子磁束が、浮上制御系に重要な役割を持つギャップセンサに悪影響を及ぼす可能性を考慮した。従来の渦電流形のセンサを光学式センサに置換え、両者の比較を行った。後者が十分実用に耐えるものであることを確認して、その使用上の注意点を明らかにした。 D)周波数特性の点から、浮上推進兼用方式では、先行研究で提唱されたゼロパワー浮上が好ましくない可能性を考察し、ギャップ長一定制御とゼロパワー制御の中間的な特性を持つセミゼロパワー浮上方式を提唱し、その効果をシミュレーションで検証した。 上記の作業と並行して、可動子消費電力を削減する別方法である、推進系のリニアモータの電機子電流で浮上制御し可動子を完全に受動的な鉄心のみで構成する方法の試験機も製作し、制御実験を行った。
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