本研究は、パワーエレクトロニクス技術を用いた新送電システムFACTS(Flexible AC Transmission Systems)に関して、特にサイリスタ制御直列コンデンサTCSC(Thyristor Controlled Series Capacitor)による送電線インピーダンスの制御による電力潮流制御方式について、試作装置を用いて、本研究室にある模擬送電線路における実験を行い、その送電電力向上及び安定度向上効果を実験的並びに解析的に検討しようとするものである。 サイリスタ制御直列コンデンサ装置は既に試作して所有しており、試作の段階で定格等、種々検討し、多くの知見を得ている。今回主要設備として購入したPCベース計測器は、パソコンをベースとした同時多チャンネル測定が可能で、かつFFT等波形解析機能を持たせうる計測器である。これを用いて、計測したデータ処理の効率化を図った。今年度の研究成果は次の通りである。 1。サイリスタ制御直列コンデンサのパラメータと基本特性の物理的関係の把握 サイリスタ制御直列コンデンサ装置を、既設の容量6kVAの同期発電機1台と模擬送電線路を用いて構成した一機無限大母線系統に導入し、その構成要素のパラメータを変化させたときの、定常時及び過渡時の振る舞いを検討した。等価インピーダンス特性および安定化効果について実験及びシミュレーションで検討した。更に、パラメータ変化による不安定現象の発生条件などについてシミュレーションにより検討した。 2。各種既存制御系との相互影響の検討 サイリスタ制御直列コンデンサと従来から行われている各種制御系との相互影響を実験並びにシミュレーションで検討する。このため、シミュレーションモデルを作成した。TCSCには、発電機の回転速度変化を検出してこの動揺を抑制する一次遅れの点弧角制御系を装備した。既存制御系としては発電機の自動電圧制御装置(AVR)を取り上げ、その有る、無しの場合について、制御系相互の影響関係を調べた。今後は、以上のシミュレーション結果を踏まえて、TCSC制御と既存制御系との協調制御方式について検討していく予定である。
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