酸化物超伝導線材を電力機器用巻線に適用するためには、大電流容量かつ低交流損失性を有する導体の開発が必要不可欠である。酸化物超伝導線材は、結晶の配向性を向上させ高臨界電流密度を得るために薄いテープ状に圧延加工されたものが主流である。本研究では、これら酸化物超伝導線材の導体構成法としては転移並列導体が最適であると提唱し、その電磁特性の解明に取り組んできた。転位並列導体は、各素線を絶縁し、素線間のインダクタンスバランスをとることにより、素線間の電流分流を均等化しかつ低交流損失化を図ろうとするものである。実際の設計、製作段階では転移位置は最適点よりずれる可能性を大いにはらんでいる。その際の交流損失、電流分流特性を把握するために、本年度は、 1)遮蔽電流が素線の臨界電流に達する飽和条件下における付加的交流損失について検討を行った。素線間距離依存性や、並列導体を密に巻いた場合の導体間相互作用についても考察し、素線、導体の幾何学的配置が飽和条件下における付加的交流損失に及ぼす影響を理論、実験の両面から定量的に検討した。 2)さらに、数十層のソレノイドコイルに多数本の素線で構成される並列導体を適用した場合について、各層の上端、下端のみで転位を施す層間転位の最適条件が適用できない、すなわち層数が最適な層数からずれる使用状況を想定し、電流偏流を抑制しうる最外層における層内転位法について検討した。 3)得られた結果に基づき、実用において重要となる超伝導転位並列導体の基礎的交流損失特性のまとめを行った。
|