研究概要 |
近年,従来の誘導機の基本波モデルと異なる速度センサレスベクトル制御系として,高周波信号重畳による回転子スロット高調波を利用した速度推定方式,また漏れインダクタンスを利用した速度推定方式が提案されている。この速度推定法では回転子スロット高調波の突極特性により速度を推定するため,従来のように低速時に誘起電圧の減少による速度推定精度の低下が無く,零速に置いても安定な運転が可能となる。 本稿では,高周波信号重畳による回転子スロット高調波を利用した速度センサレスベクトル制御系を検討するため,回転子スロット高調波の突極特性を利用した速度推定の原理とその微分方程式の導出を行った。さらに突極モデルを用いた速度推定のシミュレーーションを行った。現時点に置いては回転子スロット突極特性を考慮した誘導機モデルを構築できていないため,突極特性により得られる速度情報を機械系の式から得られるものとして考慮した。 次に回転子スロット高調波を利用した速度センサレスベクトル制御系のシステム構成を示す。電圧指令に三相平衡した高周波信号電圧を重畳することにより固定子電流には重畳された高周波成分と回転子位置情報を含む成分が含まれる。これをLPFとHPFを通すことにより基本波成分と高周波成分に分ける。LPFの出力は電流制御に用いる。一方,HPFを通した出力には高周波電流の正相分と逆相分が含まれる。ここで,回転子位置情報は逆相成分に含まれるためさらに逆相成分のみを取り出しスロット高調波突極モデルの速度オブザーバに入力する。また磁束制御を行うため電流モデルによる磁束演算、一次周波数を得るためすべりを演算する。速度指令を+20rpm→-20rpm→+20rpmにランプ変化させた場合の数値シミュレーションを行い,良好な動作を確認した。
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