電力システムは大規模非線形制御システムであり、制御器や電力機器が新しく設置されて系統が変わっても、既に設置されている制御器や電力機器のゲインは再設定されないのが現状である。したがって将来のIPPの増加と過負荷運転などを踏まえると、各制御器を設計するローカル解析と、系統全体を対象とするグローバル解析が、今後さらに要求されるものと思われる。 本年度の研究については、上記の問題に基づいて、前回研究課題を継承しつつ検討をすすめ、次の成果が得られた。 1 多機電力システムの基本となる1機モデル系統において、AVR・GOVに加える補助制御入力Ua-Ugの特にUaを非線形入力とすることにより、各リミッタを考慮したゲインを決定して、線形入力の場合に比較して臨界故障除去時間tcrはかなり延びることが分かった。 2 非線形入力Uaおよび線形入力UgをNew England 10機・39母線モデル系統の10台中3台の発電機に加え、提案する平衝点制御の方法により分散制御を行った結果、制御応答およびtcrがかなり改善された。電気的出力(有効電力)の大きい3台の発電機にUa・Ugを加えた状態で、他の故障に対する過渡安定度を調べたところ、30故障点にわたって良好な制御応答とtcrの延びをシミュレーションにより検証することができた。
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